萎縮医療とお産難民

看護師サプリ

助産師がよくわかるための看護師コラム

萎縮医療(防衛医療)という言葉をご存知でしょうか?!元々は今から約50年ほど前に、アメリカを発端に引き起こされた問題として知られていました。医療訴訟の件数が我が国よりもはるかに多いアメリカでは訴訟に巻き込まれることを回避するために、そのようなリスクが高い診療科を自分の専門分野として選択しない医師が増加していきました。この流れが結果的に産科医不足を引き起こし、需要と供給のバランスが崩れた状態が常態化してしまったのです。

我が国でもアメリカの後を追うように、年々医療訴訟件数が増加しています。診療科別の医療訴訟件数を見ても産科の医療訴訟件数はトップクラス!内科や外科の医師の絶対数よりも産科医は少ないにも関わらず、1000人当たりで算出すると圧倒的に産科の医療訴訟が多い!これが理由で産科を選ばなくなる研修医が増えるだけでなく、産科医の高齢化が進んで、次世代を育てる年齢層が減っていくことが懸念されています。

たらい回しや産科の撤退等、これから出産をする妊婦さん達の不安をあおるようなニュースが後を絶ちません。実際に私の友人は結婚後地方に引っ越したのですが、お産場所が確保できないと言って困り果てていました。(結局彼女は里帰りして、無事に元気な赤ちゃんを産みましたが…)

でもこの悪循環、一方的に医療従事者だけが作り出したものではないということが、あまりメデイアでは伝えられていません。事実、経済的な問題などで妊婦健診を受けていない状態で搬送されてくる「駆け込み出産」の件数が増加しています。どんどんおなかが大きくなっていくのに、一度も受診しないという感覚が私には理解できませんけど…。妊婦健診を受けていない状態で運ばれてくるってことは、感染症や既往歴・合併症のチェックもされていないままなので、当然受け入れを躊躇します。それで事故があったら訴えるって、順番が逆!萎縮医療には国民全体のモラルの低下も関係していると思います。